Interview

「YANO MUSIC FESTIVAL 2013」矢野博康インタビュー

矢野博康

矢野フェス2011、幻のオープニング案。

二年ぶり、三度目の矢野フェス、いよいよ開催です。

「自分としても、毎年定例のイベントとしてやる意気込みだったんですけど、ボンヤリしてたら二年経ってました(笑)。ありがたいことに周囲の方からも、『今年は矢野フェスやんないの?』なんて言っていただくことも多くて」

今年の話をうかがう前に、前回の矢野フェスについて振り返ってみましょう。矢野さんの手応えとしては、前回はいかがでしたか?

「今後定例イベントにしていくなら、お祭りっぽい雰囲気でやるのがいいだろうと思いました。前回は出演者のパフォーマンスが大変素晴らしかったことに加えて、僕がオープニングで和太鼓を叩いたんですけど、それがウケて、うれしかったです!」

いきなりオープニングの和太鼓の話ですか(笑)。ホントにうれしそうでなによりです。和太鼓につづき、2010年の2日目にやって好評だった『夜のヒットスタジオ』形式のマイクリレーへと展開していきました。

「あのメドレーは、出演者同士の横のつながりが見えやすくなりますよね。オープニングから出演者が総出演で他人の持ち歌を歌いながら登場してマイクをリレーしていくあのシステムのおかげで、出演者みんなでひとつのイベントを作っているという雰囲気が伝わっている気がします。本編のほうも矢野フェスバンドというハコバンが演奏を基本的にまかなうことで転換を少なくしてるし、アーティストのパフォーマンスも、幕間のお遊びのようなコーナーもすべて、なるべくシームレスにひとつの舞台の中の一コマとして見せたいというコンセプトでやってきました。それは前回もうまくできたのではという自負はありますね」

2010年はいきなりマイクリレーからのスタートでしたが、前回はさらに和太鼓演奏というオープニングが加わりましたが。

「2010年の第一回目はオープニングで『夜ヒット』形式のメドレーをやるだけでもお客さんは驚きを持ってもらったと思うんですけど、第二回目となる前回は事前にメドレーをやるって告知もしてたので、さらに、もうひとつ驚きが欲しいなぁと思ったんですよね。で、何をやろう? と思ったときに、僕がドラマーってこともありますし、羽織袴で和太鼓をやるのがいいんじゃないかって話になって。和太鼓の音色って、一発『ドーン!』って鳴らすと、いかにも祭ごとがはじまるって感じがしますよね。太鼓を打ち鳴らした余韻の中に独特の静寂が生まれるっていうか。そして演奏するにしたがって、神妙でシリアスな雰囲気と、ちょっと笑っちゃうくらい景気のよい感じが両方醸し出される。それって、自分が理想とする“矢野フェスっぽさ”を象徴してるのかなと、後になって思ったりしました」

和太鼓の演奏って、本職のドラムと比較して難しかったですか?

「突き詰めたらとてつもなく奥の深い世界なんでしょうけど、youtubeで和太鼓の演奏をいくつか観て、大体の雰囲気でやりました。遅く始まって速くなる、みたいな(笑)。ただ、顔がニヤけないようにするのが大変でしたね」

とにかく真剣な表情で叩いてくれとダメだししたのをよーく覚えています(笑)。

「かなりされました(笑)」

そういえば、和太鼓のアイディアの他にナマハゲをやるって話もありましたよね? 北三陸的にはナモミですか(笑)。

「おら、ナモミやりてぇ(笑)。ナマハゲってちょっと憧れますよね! で、ナマハゲの面を被って太鼓叩きたいなーって思って、ネットで『ナマハゲ 衣装 レンタル』って検索してみたんです。そうしたら、Yahoo!知恵袋で同じような質問している方がいて、その質問のベストアンサーに、『地方に根付いた神事ですから、その衣装は人に貸すものではありません。ましてや余興でやるなどもってのほかです』みたいなことが書かれてて、自分が怒られてるような気持ちになったので諦めました(笑)」

企画当初は、和太鼓を叩くナマハゲが登場して、ひとしきり叩き終えた後にパッと面を外したら、それが矢野さんだっていうオープニング案でした(笑)。

「面を外したところで、『そりゃ矢野だろう』って話ですけどね(笑)。いやー、やってみたかったですね、ナマハゲ……」

ナマハゲの話はひとまず置いておきまして、前回はメドレー前にオープニングでひとネタやっちゃったんで、今回もなんかやらないわけにはいかないですよね。

「ありがたいことに、今年も和太鼓やらないのかって結構いろんな方に言われました。もちろん、和太鼓でもいいんですけど、ひと知恵絞って違うこともやってみたいですね」

前回のオープニングで和太鼓演奏が終わったあと、日の出に富士山をバックにした景気のいい筆文字のタイトルが出ましたが、あれは毎年元旦に放送されている『爆笑ヒットパレード』をイメージしてみました。実際の文字はイラストレーターの山藤章二さんが書いていますけど、矢野フェスのタイトルは山藤さんの文字に似せて矢野さん自身が書いたという。

「夜中スカイプをしながら、モリタさんとデザイナーの大久保(浩一)さんとで矢野フェスの美術周りの打ち合わせしていたときに出た案で、急遽筆ペンを取り出して書きました。完成したのは明け方だったよね(笑)」

夜中の12時くらいからあれこれ始めて、とっくに7時を回ってましたよ。ちょうど、アナログ放送が終わる時期(2011年6月開催)だったので、本番では4:3のプロジェクター画面にあえて16:9の画角のタイトルを映しだして、上下の黒マスクに「アナログ」だの「ご覧のアナログ放送は2011年7月に終了し、見ることができなくなります」とか、入れる必要ないのに余計な細かいことをやらかしてました(笑)。神は細部に宿る! とでも言いましょうか……自分で言ってちゃ世話ないわけですが(笑)。

「当時、ああいう映像をよく見ましたね。たかが2年ですけど、されど2年ですね。今は完全地デジですもんね。不思議なもんで、アナログ放送なんて遠い昔のような気がしますよね」

そんな前回から2年を経て、今年のオープニングですが。

「具体的には言えないですけど、やるからには景気のいいものにしたいですね」

前回の和太鼓も景気のいい感じでしたが、今回も景気良さげっぷりでは負けてないんじゃないですかね。

「楽しいと思いますよ(笑)」

楽しみにしていてください!

矢野フェス2011、オープニングメドレー。

つづいて、前回の出演者のみなさんのパフォーマンスを振り返ってみましょう。まず、オープニングのメドレーでは、羽織袴姿の矢野さんが土岐麻子さんの「GIFT〜あなたはマドンナ〜」を歌ってスタートとなりました。

「あの頃、あの曲がCMで異常に流れてたじゃないですか。みんな知ってる曲だったと思います。で、元々土岐と僕は同じバンドをやってた間柄だし、彼女のヒット曲を僕が歌うのも面白いかなと思って(笑)」

まぁ一般的に考えて、まず男性が歌う曲ではないですよね。

「カラオケであの曲を歌うのはほぼ女性でしょうね」

つづいて、堂島孝平くんの「葛飾ラプソディー」を歌いながら土岐さんが登場です。一回目では(堀込)泰行くんがこの曲を歌って登場でしたが、毎回、堂島くんのメドレー曲が「葛飾ラプソディー」ってのは、プロデューサー矢野的になにか意図があるんですか?(笑)

「堂島くんからも『もっとオレ曲あるのに!』って言われてるんですけどね。なんだろう? あの曲を歌ったときに醸し出される、さも楽しげーな(笑)雰囲気っていうのが他の曲には代えがたいんですよね」

そして、秦 基博さんの「アイ」を歌いながら堂島くんが登場です。

「また、秦くんの『アイ』って曲が優しくていいバラードなんですよね。自分の半径何メートルにある日常的な愛をテーマに歌ってるっていうんですかね。で、その曲を、秦くんとは声質も違う堂島くんが歌ったらどう聴こえるんだろうというところに非常に興味がありまして、ぜひ歌ってくれとお願いしました」

秦さんはアイドリング!!!の「モテキのうた」で登場しました。

「そもそも矢野フェスはポップスを基本としながらも他ジャンルの方にも積極的に出ていただけたらと考えていまして、その発想の最初のチャレンジとして、アイドルグループのアイドリング!!!に出演していただいたんです。ただ、アイドリング!!!のみなさんが悪い意味で矢野フェスの中で浮いて見えるのは本意ではないので、秦くんという日本屈指の実力派男性シンガーがアイドリング!!!の中でも面白い系とされている曲を歌ってもらうことで、ジャンルや双方のファン同士の風通しが一気によくなるんじゃないかと思ったんですよね」

結果的にはこの意外すぎる取り合わせが、お互いのファンの方にもよろこんでいただけたようでしたね。これは、矢野フェスでなくては見られないコラボでした。

「なかなか秦くんがアイドルの曲を歌うのは見られないですよね(笑)」

アイドリング!!!はキリンジの「グッデイ・グッバイ」を歌って、馬の骨こと堀込泰行くんにマイクを渡すと。

「曲調が明るい曲ですし、女の子が歌うとかわいいかなと思ってお願いしました。リーダーの遠藤舞さんは楽器も堪能で絶対音感も持ってる方なんですけど、他のメンバーにこの曲をものすごく音楽的に歌唱指導している姿が印象に残ってますね。改めて振り返ってみると、オープニングからなかなか盛りだくさんですね。ただでさえ、矢野フェスは全体のボリュームがありますから、今後はオープニングのボリュームが増えすぎないように気をつけたいですね(笑)」

矢野フェス2011、本編。

いよいよ本編ですが、前回は各アーティストのコラボレーションの多さが印象的でした。まず、土岐さんのステージにアイドリング!!!選抜メンバーと南波志帆さんが加わって斉藤由貴さんの「青空のかけら」をカバーしました。

「あれ、よかったですよねー。アイドリング!!!の名物ディレクター・森(洋介)さんからの要望で、たくさんのアーティストとコラボレーションしたいという話もありましたし、アイドリング!!!の番組初期、まだ彼女たちのオリジナル曲がないときには往年のアイドル曲を歌ってたんですよね。さらに、土岐も自分のアルバムでカバーしてたという必然性もあって、『青空のかけら』を演ってもらったんですけど、なかなか微笑ましい一コマになりました」

「How Beautiful」では秦さんとの共演もありました。

「『How Beautiful』は僕も大好きな曲なんです。あの曲を作曲したのは秦くんの事務所の後輩のさかいゆうくんということもあり、秦くんは、さかいくんの衣装を本人に無断で借りて着てましたね(笑)。そんな秦くんの茶目っ気にキュンキュンしたファンも多かったんじゃないでしょうか。さらに、この共演がきっかけとなって、秦くん作曲、土岐作詞で、秦くんと土岐でデュエットした『やわらかい気配』という曲の誕生にもつながったし。矢野フェスでの交流が各々のアーティスト活動にフィードバックされるのは、主催者の僕にとってはとてもうれしいですね」

その秦さんは泰行くんと一緒に歌った「エイリアンズ」も見どころのひとつでした。

「秦くん自身、キリンジの大ファンということもあり、自分のCDで『エイリアンズ』をカバーしてたんですよね。矢野フェスでは、泰行本人もいるので、これは共演してもらわない手はないなと思いました。秦くんは、あのとき喉のコンディションが万全でなかったのを悔やんでいて、今年は万全の状態でもう一度泰行と一緒にやりたいと燃えています」

この矢野フェスでしか見られない泰行×秦の共演がまた見られる、たぶん見られると思う、見られるんじゃないかな、ま、ちょっと覚悟はしておけと(笑)。

「ですね。ふたりとも人気者でいろんなイベントに出る機会も多いと思うんですが、共演する機会は今のところ矢野フェスしかないんですよね」

次に、アイドリング!!!のステージですが、1曲目の「ロイヤルミルクガール」からシークレットゲストのバカリズムさんが舞台に乱入してきました。

「バカリズム升野(英知)くんと僕とは結構長い付き合いなんです。で、升野くんはテレビ番組『アイドリング!!!』でも開始当初から番組MCを担当してるんですよね。アイドリング!!!の育ての親と言ってもいい。そんな彼に出演をお願いしたら快諾してもらったんですが、ただ本番当日にロケがあるとかで開演時間に間に合うかどうかは当日の昼までわからないという綱渡り状態でした。なので、シークレットゲスト扱いにせざるを得ないという(笑)。ただ、アイドリング!!!の番組スタッフチームが、升野くんがアイドリング!!!の子たちをぶん殴るウレタン製のワニや、衣装の学ランを準備して、モリタさんも、升野くんがいるパターンといないパターンの2種類の台本をスタンバイしてたりで、てんやわんやでしたが、とても楽しかったですね。でも、升野くん案外早く来れたんだよね?」

そうでした。結果的に長い時間、楽屋で暇を持て余すことになってしまって、申し訳なかったです(笑)。

「ずっと学ラン着てスタンバイしてくれてて、ありがたかったですね。持つべきものは友達だなと思いました。会場入りには間に合ったけど、その後、すぐにNHKに行かなきゃならないってことで……まぁ、AXとNHKが目と鼻の先だから良かったものの、そういうことも考慮して、セットリストを森さんが直前に入れ替えたのを今思い出しました。升野くんが次のスケジュールに無理がないよう、アイドリング!!!の出番直前になって1曲目に『ロイヤルミルクガール』を持ってきた。それが功を奏して、会場は大盛り上がりでした」

アイドリング!!!パートのラストとなる「Like a Shooting Star」では、堂島孝平さんとコラボレーション。

「あの曲は、アイドリング!!!の初期の名曲で、堂島くんの作詞・作曲なんです。彼のショーマンシップもあって、振り付けもありで一緒に歌ってくれました。ああいうシーンは、矢野フェスならではという感じがしますね。今後もそういうコラボレーションは増やしていきたいですね」

その流れで、トリの堂島くんパートに突入となるわけですが、あの日の堂島くんのパフォーマンスはスゴかったですね。

「スゴかった!  僕、かれこれ堂島くんのライブを観るのは10回はくだらないと思うんですけど、僕にとっては彼のベストライブだったように思います。素晴らしいライブは誰のファンとか関係なく伝わるみたいで、アイドリング!!!の朝日奈央の推しT(シャツ)来てたファンが『やっぱ、孝平だな!』とか言って、マサイジャンプしてた光景が美しくって泣けました。前回の矢野フェスの象徴的なシーンというかね」

今回は残念ながらアイドリング!!!の出演はありませんが、彼には今回もまた来てほしいですね(笑)。

「ぜひ来てほしいね。元々アイドリング!!!ファンの子が、アイドリング!!!が出ない矢野フェスに来てもらうのは、主催者冥利につきますよね」

矢野フェス2013。

というわけで、二年ぶりとなる今回の矢野フェスですが、前回に引き続き、堂島孝平さん、堀込泰行さん、秦 基博さん、オープニングアクトに南波志帆さん。さらに、新たにRHYMESTERさんが出演することになりました。

「RHYMESTERは、特に宇多丸さんによくしていただいていて、RHYMESTERのアルバム『フラッシュバック、夏。』の中の『into the night』っていう曲に僕が参加した縁などもあり、今回声をかけさせてもらいました。RHYMESTERはキャリアは僕よりも遥かに先輩なんですけど、世代的には近いということもあるし、前々からぜひ出ていただきたかったんですよね。日本を代表するヒップホップのグループですけれども、かつては、クレイジーケンバンドやSUPER BUTTER DOG、SCOOBIE DOとやったり、最近ではSOIL & "PIMP" SESSIONSやユーミンとも共演されたり、柔軟に他ジャンルのアーティストとも交流されてるんで、矢野フェスみたいなイベントではもしかしたら新しいコラボレーションが生まれるかもしれない。そんな期待もあって声をかけさせていただきました。僕自身、20年近くRHYMESTERのファンですから、出ていただけるのは大変光栄ですね」

矢野フェスでのRHYMESTER、どんなステージになるか楽しみですね。

「矢野フェスバンドと絡むこともあるかもしれないですし、オープニングのメドレーにも当然参加していただこうと思ってますし(笑)」

今回は、オープニングアクトの南波さんを除き、出演者が男性のみということで、一部では「男だらけの矢野フェス」なんて言われてますが。

「たまたまなんですけどね。一回、男臭い感じでやるのもいいかもしれませんね。基本的には、今までどおり、楽しくやれたらと思ってます。強いて言うなら、前回は共学の文化祭という感じだったのが、今回は男子校の学園祭みたいな感じになるんじゃないでしょうか。同じお祭り感でも、ちょっと毛色の違う感じになるのかもしれませんね」

というわけで、2013年の矢野フェス、開催までカウントダウン状態となりました。矢野さん的に矢野フェスの今後の展望のようなものは考えてるんですか?

「今後も、最低年1回は続けていきたいですね。あとは……いつか武道館とか?(笑)」

大きく出ましたね! こういう時の目標って、なんで武道館や東京ドームなんですかね?

「『横浜アリーナ目指します!』とはあまり言わないですよね(笑)。歴史もあるし、サクセスの象徴みたいなことなんですかね、武道館って。まぁ、夢物語かもしれませんけど(笑)」

まぁ、夢は大きく、継続していきたいということですかね。

「月並みですが、継続は力なりと言いますか、やはり楽しく続けていくのが一番ですね。続けることで将来何か違った絵が見られるようになるかもしれないですし。今後も、オフィシャルサイトやFacebook、Twitterでも随時いろいろな情報を更新していくので、よろしければそちらもご覧になってください」